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「バカヤロウ!うるせえ!離せ!」。
ウイスキー瓶を振り回して、男の患者がベッドの上で暴れていた。小山内恭一(山本耕史)、小説家を目指しているが、なかなか夢かなわず、アルコール依存症になってしまった。 なんとか冴(財前直見)と恵子(横山めぐみ)が2人かがりで押さえつけた。 「すいません。主人の辛さに気づけなかった私が悪いんです」。 謝ったのは妻の静(小松千春)。夫には小説に専念してもらい、静が働いて家計を支えているらしい。 翌朝のカンファレンス。久美子(京野ことみ)から小山内の病状に気をつけるよう指示があった。アルコールの離脱期のため、幻覚症状がみられるという。 「克服するためには家族の協力が必要だ」。 ![]() 公平(吉田栄作)の言葉にふだんなら大きくうなずく冴のはずなのに、今朝は浮かない表情。恵子から公平には妻子がいるらしいとほのめかされていたからだ。
「妻は強しか」。 冴はため息をついた。 |
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「そのアザはどうしたんですか?」。 小山内は冴の腕のアザを不思議そうに見つめた。 「あなたが突き飛ばしたのよ」 「ごめんなさい。この人、酔っている時のことは全然覚えていないの」。 静は冴に頭を下げた。 「あなたは小説を書くことだけを考えていればいいのよ」。 献身的といえば聞こえはいいが、静の看護ぶりは甘やかしすぎているように冴の目には映った。 「あの奥さんのやり方じゃ、きっと治らないわよ」 「患者さんの病気を治らないって断言するナースがどこにいるのよ」。 冴がボヤいていると、久美子にたしなめられてしまった。 「飲んでいるな」。 小山内のデータをチェックしていた公平は顔をしかめた。断酒しているのに何も症状が出ないのはおかしい。隠れて酒を飲んでいる可能性が高い。 久美子が病室を捜していると、小山内が戻ってきた。 「ごめんなさい」 「調べればいいだろ、先生!」。 小山内は久美子の襟首をつかんで締め上げた。 「あんた、何してるの!」。 飛び込んできた冴が小山内の腕をふりほどいた。 「私物まで勝手にチェックするのはやりすぎよ」 「あの人を救うためなの」。 ナースステーションで冴と久美子がやりあっていると、静が血相を変えてやって来た。 「あの人、どこにもいないんです」。 |
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病院を抜け出した小山内は、酒屋の自販機の前で倒れていた。手にはビール缶をしっかり握り締めていた。 「うるせえ!飲んでやる!どうせ、オレのことなんか誰も信じてないんだ!」。 激しく暴れる小山内を冴と久美子が必死に取り押さえた。 病室に連れ戻された小山内は注射でようやく眠りについた。静がサイドテーブルに置かれたヘアトニックの容器を久美子に手渡した。 「これは!」。 中身はウイスキーだった。 「捨てても捨てても、どこかに隠し持っているんです。先生のせいではありません」。 久美子は自分の無力さを痛感した。 「結婚する前はあんな人じゃなかったんです」。 静は冴にこぼした。 「あなたのために小説家になりたいって思うことがプレッシャーになってるんじゃないの?」。 しかし静は自信たっぷりに言いきった。 「あの人には才能があるんです」。 静の言葉が現実となった。小山内の応募したミステリー小説がコンテストに入賞したのだ。 「やっぱりあの奥さんはタダ者じゃなかったのね」。 冴は脱帽した。小山内の病室はお祝いの花束で埋まった。 「おめでとう」 「ありがとうございます」。 ![]() 小山内はロッカーに隠していた酒瓶を全部出した。
「今までオレは自分の才能に自信が持てなくて、酒に逃げていた。でも、もう必要ない。一生、酒は飲まない」。 小山内は静に誓うと、2人はしっかりと抱き合った。 |
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夜勤の冴と恵子がナースステーションで日誌の整理をしていると、かなえ(宮川由起子)が飛び込んできた。 「小山内さんがまたお酒を飲んで暴れています」。 静はさっき帰ってしまった。 「うるせえ、酒持って来い」。 床にはペットボトルが転がっていた。 「まさか、そんなワケないわよね」。 冴は給湯室でそのペットボトルに静が何かを注いでいるところを目撃していたのだ。アレはお茶ではなかったのか。 「すいません、私がついておきながら、こんなことになってしまって」。 昨夜の出来事を知らされた静はひたすら謝った。 「また、オレ、酒を飲んだのか」。 小山内はうなだれた。 「大丈夫よ。私が必ず立ち直らせてあげるわ」。 静は母親のように小山内を抱きしめた。 冴はどこかしら違和感を感じた。 「あの奥さん、旦那さんが回復するの、あんまり喜んでないような気がするんだけど」 「そんなわけあるはずないでしょ」。 冴の疑念は恵子に一笑されてしまった。 |
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小山内の病室に編集者がやって来た。 「すぐに第2作にとりかかって下さい」。 いっぱいのファンレターを手渡されて、小山内は表情をほころばせた。 「このヒモでオレを縛ってくれませんか」。 冴は小山内からヒモを手渡された。 「早く立ち直って小説を書きたいんです。だから絶対に酒を飲まないように、このヒモでベッドに縛りつけてほしいんです」。 小山内の決意に冴は心打たれた。 「いいわ。もっと丈夫なロープを持って来てあげるわ」。 冴が避難用のロープを持って病室に戻ってみると、信じられないような光景が待っていた。小山内をベッドに縛りつけた静が馬乗りになって、小山内の口に酒瓶を突っ込んでいるではないか。 「飲んで!あなた、飲むのよ!」 「静さん!止めなさい!」。 冴は静をベッドから引きずり下ろした。小山内はぐったりとして動かない。 「すぐ処置室に運んで!」。 静は病室から逃げ出した。 |
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